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【結城友奈は勇者である】アニメファンコミュニティDXの最前線 〜アプリがファンにもたらすロイヤリティ形成〜

2022.09.05

CRAYONは様々なアーティストの方々に加えて、アニメ/映像作品などに公式アプリ開発サービスを提供しています。幅広いファンへの発信、ファンとのコミュニケーションが求められるシーンにおいて、CRAYONアプリの活用は拡がっています。

なかでも2021年10月にはじまったTVアニメ第3期『結城友奈は勇者である -大満開の章-』に合わせて公式アプリ『ゆゆゆ勇者部』をスタートさせたのが、2014年より息の長い人気を博す『結城友奈は勇者である』シリーズ。

一方向の情報発信ではなく、「作品を介して様々な人々が集まるコミュニティを形成したい」との思いからサービスを導入いただいた経緯や、実際にアプリを運営してみて気づいたマーケティングの在り方について、作品の宣伝を担当するポニーキャニオン・アニメクリエイティブ本部の田中良太さんと、電通の武田陽佑さんにお話をうかがいました。

「ゆゆゆ勇者部」ファンコミュニティアプリ誕生までの背景

左から、田口(CRAYON)、田中(ポニーキャニオン)、武田(電通)

田口:まずはポニーキャニオンで宣伝を担当されている田中さんから、アニメ作品『結城友奈は勇者である』についてご紹介いただけますか?

田中:簡単にご説明すると、『結城友奈は勇者である』は、いわゆる「勇者」と呼ばれる女の子たちが、過酷な運命にさらされながらも必死に世界を守っていく作品です。

ありがたいことにTVアニメ開始時から現在まで長く応援をいただいていて、『鷲尾須美の章』や、スピンオフ作品『結城友奈は勇者部所属』は映画館でも上映することができました。並行して小説やコミック、ゲームなどの展開も行われてきましたし、応援してくださる方々の熱量がかなり根強い作品だな、と思っていますね。

田口:アニメの1期がはじまったのが2014年10月ですから、もう8年ほど愛されてきたアニメ作品ということになりますね。

田中:そうですね。自分がポニーキャニオンに入社した頃には既にはじまっていた作品なので、実は僕も途中から関わらせていただくことになりました。タイミング的には、劇場で『鷲尾須美の章』を上映していた頃から担当させていただいていて、それから現在まで、ファンのみなさんの熱量が変わらず続いているコンテンツだと感じています。本当にファンに愛されている作品だな、と。

田口:では今回、CRAYONを使っていただいたアプリ『ゆゆゆ勇者部』で、作品のコミュニティをアプリ化しようとしたきっかけはどのような経緯だったのでしょうか?

武田:アニメ製作委員会の一員である電通から、クレヨンを活用した新しいコミュニティ施策をご提案したところ、ポニーキャニオンさんも「やりましょう」と言っていただいたことがきっかけです。

ご提案の背景としては、「ファンのみなさんの作品の楽しみ方が変わってきている」ことが大きかったと思います。
最近はコンテンツがブームになる方法も変わってきていて、多くの人に広く薄く知ってもらおうとするよりも、作品を深く楽しんでいただける方を増やしていった方が、結果的にコンテンツの成長に繋がるだろうという仮説を持っていました。
「結城友奈は勇者である」は既に人気があって熱量の高いファンがたくさんいらっしゃるので、通常のTwitter等を使った宣伝とは別で、作品の魅力をより深く体感していただくことを通じて更なるヒットにつなげられれば、という話をしていました。

田口:作品を楽しんでくださるコミュニティを大切にしていこう、という方向性ですね。

武田:今コンテンツビジネスにかかわっているみなさんは、自然と「コミュニティって大事だよね」という感覚になっていると思うんですが、それを施策にしてファンの方にお届けすることについては、まだまだその機会が少ないと思っていました。そこで今回は、Twitterのようなオープンな場所ではなく、クローズドなアプリでコミュニティを可視化したときに「どういう効果が生まれるだろう?」という部分も含めて提案させていただきました。

田中:提案いただいたとき、僕らも「まさにその通りだな」と思いました。『結城友奈は勇者である』の場合、もともとファン同士のコミュニティは存在していましたし、聖地巡礼をみなさんで行なっている様子もTwitterなどで拝見していて、僕たちも「作品を楽しんでくださっているな」と感じていました。

ただ、そこに公式が入っていくのはどうだろうという思いもあって、これまで「コミュニティ」という点では、公式で何かしようということには至っていなかったんです。そんな中『勇者部』のご提案をいただいたので、僕らとしては、公式からちょっとしたファンクラブのような場を提供できたらいいな、と思っていました。

武田:実際、エンタメコンテンツのみならず、広告コミュニケーションにおいても、「コミュニティをどうつくるか/活用するか」という話はかなり増えていますよね。同じ趣味や価値観を持っている人たちが集まることって、単純に楽しいことでもあると思いますし。

田中:そうですね。以前より、ファン同士が接点を持つことが肯定されてきているような気がしています。それに、「どんな人がつくっているのか知りたい」というように、アニメ制作の裏方の方々への興味も増してきているというか。
「好きなものにまつわることを、全部知りたい!」ということなのかもしれませんね。

理的安全性が高い雰囲気の醸成、アプリ内限定アンケートなど、『ゆゆゆ勇者部』だけの楽しみかた

田口:実際に『ゆゆゆ勇者部』をはじめられてみての感想も教えてください。

田中:たとえば、Twitterと分かりやすく違うのは、コメント数がすごく増えたことです。もともと、『ゆゆゆ』はシビアな展開も多い作品なので、Twitterでは主観を交えず淡々と更新することを心がけていて、コメントをくださる方はフォロワー数に対しては多くない作品でした。それに対してアプリでは、もう少し中の人が見えるような雰囲気で進めることができました。また、クローズドなアプリでは、作品を好きな人たちだけしかいない空間でより気軽にコメントができるというファン心理もあるのかもしれません。宣伝担当としても、みなさんの意見をダイレクトにいただけてすごく参考になりました。

武田:ファンのみなさんの「安心スペース」のような場所ですよね。もちろん、これまではその役割をTwitterやHPでやってきたつもりだったのですが、その場合「こちらから発信する情報」だけになってしまうので、やはりアプリと比べるとできあがったものが大きく違いました。その辺りが、コメント数やハートの多さにも結びついたように思います。

田中:特に3期の放送期間の終盤に、アプリ企画として、ファンのみなさんに販売してほしい複製原画のカップリングをアンケートした際の反応は印象的でした。クローズドな場所だからこそ率直なニーズを教えていただきましたし、自分的には新作の中でコアなストーリーを担っている「乃木若葉、高嶋友奈、郡千景」が選ばれると思っていたんですが、実際には僅差で「結城友奈、東郷美森」が選ばれて、「やっぱりここに落ち着くんだな」とビックリした部分もありました。アンケートを取らなければ別の複製原画になっていたかもしれないですし、昔から見てくださっているファンの方々の熱量を改めて感じました。

田口:あの投票企画では、1日おきなどかなり短いスパンで途中結果が発表され、その様子をファンのみなさんも楽しんでいるような雰囲気も印象的でしたね。

田中:「自分の一票で変わるかもしれない」という部分も楽しんでいただけた気がします。当初は毎日結果を発表する予定はなかったんですが、結果的にはすごくよかったと思います。毎日アプリに訪れてくださって「今はこんな結果なんだな」と楽しんでくださったので。

武田:これってきっと、田中さんが話されていた「制作スタッフがどんな人か気になる」というお話と似ていて、完成したものだけを「どうぞ」と渡すのではなく、そこまでの過程も一緒に楽しんでくださったということなのかな、と思いました。

田中:そうですね。僕らとしても、実は以前から、ファンのみなさんと一緒につくっていくような企画を実現したいと思っていたんです。ただ、それって実現までにはすごく時間がかかりますし、なかなか大変な作業でもあります。そういう意味でも、今回アプリがあったことで、「ファンの意見を聞いて、カップリングの構想をつくって、イラストを描いていただき、それを商品化するという流れが、『ゆゆゆ勇者部』の中で1本化できたと思います。

武田:こういった企画は、僕らとしても、CRAYONをご提案した際に実現したいと思っていたことでした。アニメに限らずですが、コンテンツを楽しんでいる人がグッズを買ってくださる時って、モノ自体の価値だけではなく、その周辺にある色んな体験なども含めて購入することが多いと思っていて。『勇者部』に入って、アンケートに参加して、中間結果があって、最終的に結果が出て商品になるという、その全体に価値を感じてくださっていたのが嬉しかったです。これをTwitterでやろうとしてもTLを流れていってしまうので、ファンが毎日集まれる『ゆゆゆ 勇者部』でできたことは、すごく大きかった気がします。

田口:書き下ろしで単価も安くはなかったと思うのですが、多くの方に購入いただきましたね。

田中:そうですね。多くの方に喜んでいただけたと思っています。

武田:そういえば、田中さんはアンケートを取る際、作品の展開に影響を受けて大きく結果がかわってしまってはいけないということで、どのタイミングではじめるか慎重に考えていましたよね。それを見ていて、スタッフの方々がファンのみなさんの気持ちを考えていくことは、コミュニティにとってすごく大事だな、と感じました。

田中:放送中のタイミングによって結果に大きく差が出てしまうと思ったんです。

ファンコミュニティアプリ連動ECの価値

田口:『ゆゆゆ勇者部』のアプリ連携ECに関しての使い心地はどうでしたか?

武田:EC面では、アプリ上で商品をまとめたこともすごくよかったと思いました。というのも、アニメグッズの場合は様々なメーカーさんがそれぞれにグッズを制作/販売するという流れになっています。ですから、販売経路がどうしてもバラバラになってしまうことが多いんです。

田中:やはり、ライセンシーさんごとに販路と販売ページがあるというのは、ファンのみなさんの視点から見ると使いづらいですよね。今回、数的には協力いただけるライセンシーさんの商品から絞って販売する形でしたが、そうして公式アプリ内にまとめてみると、以前出したものでもやっぱり商品が動くんですよ。たとえるならイベントの物販の委託販売を公式アプリ内でやるような感覚で、これがあるだけでもアプリの価値があると思える機能でした。

それから、今回のようなアプリサービスは、既にしっかりとファンがついている作品こそ使いやすい気もしました。そういった作品の場合、各種SNSからアプリに誘導するコストも低いですし、ECサイトも、はじまったばかりの作品より様々な商品を揃えることができるので。

武田:続編までの間に、作品の熱量を下げないように使うことも有効そうですね。

田中:そうですね。TVアニメに関して言うと、その使い方が一番合っていると感じます。

田口:なるほど。運営される中でより改善してほしい点などはあったでしょうか?

田中:強いて言うなら、そうしたECでのライセンシーとのやりとりを一括化してくれるとありがたかったです。『ゆゆゆ勇者部』の場合、ライセンシーとのやりとりを一旦ポニーキャニオンで預かって対応する形だったので、その負担を少なくしていただけるサービスがあるなら、さらにありがたいと感じる方も多いのかな、と。もちろん、こちらですべてやりとりする形だとしても、やる価値があるくらいいい機能だと思いました。

田口:その辺りは苦労をおかけしました(笑)。『結城友奈は勇者である』がはじまった当時は対応できなかったのですが、現在はECサイトをCRAYON側で構築・運用するスキームも用意し、かつ、こちらでグッズ企画・制作などもできるようになってきています。

また、コンテンツの投稿を含む運営面についても、僕らでもう少しサポートできるサービスがあってもいいのかな、と感じており、現時点では一部対応できるようになりました。例えば、アプリに投稿する作業など。
企画や施策の内容はみなさんに考えていただき、投稿作業などはCRAYONが代行する。
そうすることにより、アイディアを出すことに集中していただけるのかな、と。

田中:ああ、それはとても嬉しいです……!!

双方向のコミュニケーションを軸に、様々な可能性の発見

田口:色々とお話をうかがいましたが、改めて、今回の『ゆゆゆ勇者部』での取り組みを振り返ってみての感想を教えていただけると嬉しいです。

武田:『ゆゆゆ勇者部』では「コミュニティマネージャー」の役割を田中さんをはじめとするアニメ製作委員会の宣伝担当の方がやられていて、ファンの皆さんが参加しやすい環境を作られていて、すごくいいコミュニティができ上がったように感じました。悪口が書かれるようなこともありませんでしたし、とにかくファンのみなさんの熱意が集まる場所になっていたことが、僕としてはとても印象的でした。アプリ限定のコンテンツとして投稿された制作スタッフの方々のブログなども、ファンのみなさんはもちろんのこと、我々も含む作品にかかわるすべての人々にいい影響を受けていたように感じましたね。

田口:アニメはかかわる方も多いですから、ある意味では、制作陣にとっても作品を通して人々が繋がるコミュニティになっていたのですね。

武田:理想的には、コミュニティとは”同じものを好きな人たちの集まり”ですから、その中に「ファン」というひとつの役割があるのと同じように、「つくり手」という役割があってもいいと思うんです。もちろん、その距離が近すぎることが一概にいいとは言えない場面もあるかとは思いますが、ファンと制作スタッフがまったく別々の場所にいるのではなくて、ある部分ではかかわり合えることができてもいいのかな、と。それが実現できると、作品のコミュニティとしても、いいコミュニティが広がっていくのかな、と思ったりしています。

田中:ファンの方々の交流についても、トラブルがあってファン同士が喧嘩してしまうことほど不毛なことはないですから、どこまで自由に交流できるかは考える必要があります。ですが、世の中の流れとしては間違いなく「みんなで交流したい/意見交換したい」という傾向になっていますし、いいコミュニティをつくることは作品のためにもなると思います。

武田:ファンの間で自然発生的に生まれるコミュニティと、公式が提供するコミュニティの両方があっていいわけですから、僕らは「公式のコミュニティはどうあるべきか」を考えていくということですよね。公式版という意味では、今回『ゆゆゆ 勇者部』はちょうどいいバランスでできたんじゃないかと思いました。また、今回たまたま『ゆゆゆ勇者部』をダウンロードして使ってくれていた友人がいたんですが、彼が言っていたのは、毎クール色んなアニメを観ているのに、スマートフォンのホーム画面に『勇者部』のアイコンがあるだけで、不思議と自分の中でのロイヤリティが上がるということで。バッジのように作品によりコミットしている感覚が強くなったと言っていて、「そういう効果もあるのか」と思いました。

田口:確かに、スマートフォンはどこにでも持っていきますしね。

武田:そうなんですよ。毎クール色々なアニメが放送されている中で、視聴者の方々は「この作品は最後まで観よう」「これは途中まででいいかな」と取捨選択せざるを得ないと思うんですが、日常的に持ち歩いてるものの中に、『結城友奈は勇者である』という作品にすぐにアクセスできる場所があることは、とても大きいことなんだな、と改めて思ったりもしました。

田口:今回のお話を踏まえて、ファンと作品をテクノロジーにより深くつなぎとめ、作品運営側が負荷なく、企画および体験価値に集中できる環境を整えていきます。

 


【プロフィール】

田中良太
株式会社ポニーキャニオン
アニメクリエイティブ本部
プロデュース3部プランニングG 宣伝担当

武田陽佑
株式会社電通
コンテンツビジネス・デザイン・センター
ビジネスプロデューサー

田口和弘
株式会社CRAYON
取締役
アライアンス統括責任者


 

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